確定申告・インボイス

インボイス登録は必要? 個人で働く人が決める前に知っておくこと(登録しないとどうなるか・公表される情報・特例)

公開・姫カレンダー編集部

「インボイス登録してる?」とお店や取引先に聞かれて、どうしたらいいか分からない。夜職・ナイトワークで個人で指名を取っている人や、サロン・セラピストなど個人で働く人から、よく聞く悩みです。

インボイス登録は、した方が得・しない方が得と一言では言えません。この記事では、決める前に知っておきたいことを、国税庁の案内(2026 年 10 月 16 日確認)をもとにまとめました。登録すると何が変わるか、登録しないとどうなるか、国税庁のサイトで何が公表されるか、負担を軽くする特例の期間、登録の取りやめ方です。

インボイスを出せるのは登録した人だけ

インボイス(適格請求書)は、消費税の金額や登録番号などを書いた請求書や領収書のことです。国税庁の説明では、インボイスを出せるのは、税務署の登録を受けた「インボイス発行事業者」だけです。登録すると、個人の場合は「T+13 桁の数字」の登録番号がつきます(国税庁 No.6498)。

登録の申請は、スマホやパソコンから e-Tax ソフト(WEB 版)でできます(e-Tax インボイス制度の申請届出等を行う)。

登録すると消費税の申告が必要になる

いちばん大きな変化はここです。国税庁の説明では、2 年前(基準期間)の課税売上高が 1,000 万円以下の人は、原則として消費税を納める義務がありません。ところが、インボイス発行事業者の登録を受けると、1,000 万円以下でも免除されず、消費税の申告と納税が必要になります(国税庁 No.6501)。

負担を軽くする特例(2割特例と3割特例)

登録をきっかけに免税から課税に変わった人には、納める税額を軽くする特例があります。期間に注意してください。

特例使える期間(個人の場合)納める税額の目安
2割特例2023 年 10 月 1 日〜2026 年 9 月 30 日を含む課税期間。個人は 2026 年分まで売上にかかる消費税の 2 割
3割特例(令和 8 年度の改正で新設)2027 年分・2028 年分。個人だけが対象売上にかかる消費税の 3 割

3割特例を使える主な条件は、個人であること、2 年前の課税売上高が 1,000 万円以下であること、インボイス発行事業者の登録を受けていることです。前もって届け出る必要はなく、消費税の申告書に使う旨を書けば使えると案内されています。法人は使えません(国税庁 令和8年度税制改正特集・2割特例の概要)。

特例があっても、消費税の申告そのものは毎年必要です。所得税の確定申告とは別の手続きが 1 つ増える、と考えておきましょう。

登録しないとどうなる?

登録しなくても、仕事を続けること自体に問題はありません。消費税の免税のままでいられます。

変わるのは、お店や取引先の側の税金の計算です。インボイスがない支払いについて、相手は消費税の計算で差し引ける金額が減ります。国税庁の令和 8 年度改正の案内では、インボイスのない仕入れについて相手が差し引ける割合は、2026 年 10 月から 2 年間は 70%、2028 年 10 月から 2 年間は 50%、2030 年 10 月から 1 年間は 30%、2031 年 10 月からは差し引けなくなると段階的に下がります(国税庁 令和8年度税制改正特集)。

そのため、相手によっては登録をお願いしてくることや、報酬の話し合いになることがあります。ただし、相手の申告のしかた(簡易課税など)によっては、インボイスがなくても困らない場合もあります。必要かどうかは相手の事情で決まるので、まず聞いてみるのが近道です。

お店や取引先に聞くときの例文
お疲れさまです。インボイスの登録について確認させてください。 私が登録していない場合、お支払いや手続きで何か変わることはありますか? 登録が必要な場合は、いつまでに必要かも教えていただけると助かります。

国税庁のサイトで公表される情報

登録すると、国税庁インボイス制度適格請求書発行事業者公表サイトに情報が載り、登録番号から誰でも調べられます。国税庁の Q&A では、個人の場合に公表されるのは次の項目です(インボイスQ&A 問19)。

  • 氏名
  • 登録番号
  • 登録年月日
  • 登録が取り消されたり、効力を失ったりした場合は、その年月日

身元が分かることを気にしている人は、特に次の点を知っておいてください。

  • 屋号は氏名の代わりになりません。個人の「主たる屋号」や「主たる事務所の所在地」は、本人が申し出た場合に追加で公表される項目です
  • 旧姓や通称は、住民票に併記されている場合に限り、氏名の代わりに、または氏名と並べて公表するよう申し出ることができます(国税庁 公表事項の公表(変更)申出手続)
  • インボイスには氏名(または名称)と登録番号を書く決まりなので、受け取った人は公表サイトで登録を確かめられます(国税庁 No.6625)

身元を守る工夫はSNS の写真から身元が分からないようにするにもまとめています。

登録をやめたいとき

登録は取りやめることができます。「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」を出します。国税庁の案内では、取りやめたい課税期間の初日から数えて 15 日前の日までに出すと、その課税期間から登録がなくなり、過ぎると次の課税期間からになります(国税庁 登録の取消しを求める旨の届出手続)。

注意したいのは、免税の人が登録した場合、登録日から 2 年を経過する日を含む課税期間までは課税事業者のままで、登録を取りやめても消費税の申告が必要になることです(2023 年 10 月 1 日を含む課税期間に登録した人は除かれます。国税庁 FAQ)。「とりあえず登録して、だめならすぐやめる」は難しいと考えておきましょう。

決める前に、取引先に必要か聞く、売上の大きさを確かめる、そのうえで迷ったら税務署か税理士に相談する、の順に進めると安心です。

よくある質問

個人で働いていますが、インボイス登録は必要ですか?

法律で全員に義務があるものではありません。お店や取引先がインボイスを必要としているかどうかで決まることが多いので、まず相手に聞いてみましょう。登録すると消費税の申告と納税が必要になるので、迷ったら税務署か税理士に相談してください。

登録すると、本名が公表されますか?

国税庁の公表サイトでは、個人は氏名・登録番号・登録年月日などが公表されます。屋号は氏名の代わりにはならず、追加で載せられる項目です。旧姓や通称は、住民票に併記されている場合に限り、氏名の代わりに公表するよう申し出られます。

2割特例はいつまで使えますか?

国税庁の案内では、2023 年 10 月 1 日から 2026 年 9 月 30 日までの日を含む課税期間が対象で、個人の場合は 2026 年分までです。2027 年分と 2028 年分は、個人だけが使える 3割特例が新しく設けられています。

登録したあと、すぐにやめられますか?

取りやめの届出はできますが、課税期間の初日の 15 日前の日までに出す必要があります。また、免税の人が登録した場合は、登録日から 2 年を経過する日を含む課税期間までは、やめても消費税の申告が必要です。

出典